2024年2月に読んだ本

去年の秋から悩まされてた体調不良、これかと思うものがあり採血検査をしてきた。

生まれつきの体質でもう私の一部だし、今更「答え」に出会えるとは思えないけど。

それでも「答え」が欲しいのは人たるゆえ。

 

さて、2月の読んだ本。

 

1.ケの美 あたりまえの日常に、宿るもの 佐藤卓 編著

 

 

オルビス30周年記念で開催された「ケの美」展の書籍版。

去年土井善晴さんの本を読んだ時に、「ハレとケ」の話があり、図書館でこの本を見た時、手に取らずにはいられなかった。

あとから分かったのが、土井さんと話す機会がきっかけでこの企画の方向が決まったとのことだった。この本の一番手も土井さんで、ご本人の著作から一貫した文章が良かった。

気取らず愛らしい文章が素敵!と思った塩川いづみさん、大好きなMAMBOちゃんの生みの親の方だった・・!

www.claskashop.com

今見たらドアストッパーが再入荷してる・・う、欲しい・・

松場登美さんもとても素敵だった。資本主義の恩恵を受け、ぬくぬくと手抜きな人生を享受している私にはあまりにも遠い世界ですが・・

kurasuyado.jp

 

2.南国に日は落ちて マヌエル・プイグ

 

 

須賀敦子さんの本で紹介されていて気になった一冊。

故郷アルゼンチンを離れ、ブラジル・リオデジャネイロで一緒に暮らす老姉妹の会話が中心の物語。

読み始めてはじめは、「とても耐えられない」と思った。やかましく隣人の噂話に興じる老姉妹、とても苦手だった。でも読み進めるうちに、その積み重ねた意味のないお喋りがあるからこそ、人間の深みや哀しさが表現出来ると知った。

暖かく日差し溢れる国で途切れることのない明るいお喋り、そこに落ちる影の色の濃さ。

全編にわたって会話や手紙の形式をとった不思議な文体で、どこか朗読劇のような雰囲気が面白く、実際に役者が手紙を読んでるシーンが目に浮かびさえもした。著者紹介で元々映画監督を目指していたと知り、どこかシナリオ的な文体に納得。

淡々と書いてみたが、正直かなり感情が入り乱れて色々書きたい気持ちはある。が、強い物言いになってしまうので、また気が向いたら・・

最後の翻訳者さんの解説も大いに助けになって理解が深まった。

南国に日は落ちてもなお、その夜は暖かいのだ。

 

3.母性社会日本の病理 河合隼雄

 

 

多作な河合先生の著作を次々とAmazonにおすすめされて暮らしています。

雑誌の寄稿をまとめたもので、今まで読んだものと重複した内容もあったが、今回も楽しく読んだ。

第1章にある「場の倫理」と「個の倫理」の話は、もうまさに自分はこの溝にハマり続けているなという自覚がすごかった。そしてこの本が1976年出版ということで、「そんなに前から示されているのに未だに何故・・」という気持ちが絶えない。

 

母性原理に基づく倫理観は、母の膝という場の中に存在する子どもたちの絶対的平等に価値をおくものである。それは換言すれば、与えられた「場」の平衡状態の維持にもっとも高い倫理性を与えるものである。

 

場の中に「いれてもらってる」かぎり、善悪の判断を越えてまで救済の手が差し伸べられるが、場の外にいるものは「赤の他人」であり、それに対しては何をしても構わないのである。

(共に 母性社会日本の病理 第1章より引用)

 

学校のいじめ、会社の不正、SNSの炎上沙汰、どれもお母さんのお膝の上で「ルールに従ってるうちは」見逃され温情をかけられる。だが「個」を主張した途端、果ては死ぬまで追いつめられる。

「個性は大事」と育てられた半面、このような社会で生きると心の軋轢がすごい。私自身も「自分が一番大事だ」と思う一方で、社会のルールに異様に従おうとする面がある。先月読んだ夏目漱石の「道草」もこの二つの倫理観に引き裂かれた結果の憂鬱という感じがある。

また「永遠の少年」の話も深く胸に刺さった。心理的な、あるいは実際の体験としてイニシエーション(通過儀礼)を迎えないことで、いつまでも大人になることが出来ない。思い当たることばかりで、しおしおしている・・

ちなみに先ほどの「南国に日は落ちて」の訳者あとがきにも「イニシエーション」という言葉が出てきて、同時期に読んだことにより、より深くその意味を受け止めることになった。

 

4.からだの美 小川洋子

 

 

小川さんらしい視点で語られる生きものの美しさにまつわるエッセイ集。

とっても浅いバレエファンなのですが、「バレリーナの爪先」は小川節が迸り、素晴らしい読み心地だった。ジョセフ・コーネルがとても気になる。

ハダカデバネズミの皮膚」の決して自分の人生と交差しない動物について考える話も良かった。

 

ということで2月は4冊。