2024年5月に読んだ本
早朝目覚めて窓際を見ると、バジルがしんなりと土に座り込んでいた。
100均で何気なく買ってきたもので、日当たりも風通しも悪い我が家でひっそりと芽を出している。
慌ててやかんに残っていた水をたっぷりとやり、トイレを済ませて二度寝をした。
午前遅くに目覚めると、バジルはすっかりハリツヤを取り戻し、新しい芽さえ見せている。
その健気な命に励まされると共に、水やりに気が回らなかった自分に「疲れてるねぇ」と内心声を掛けた。
半ば家出のように部署異動して1か月半、もともと希望の職種ではなかったので、じわじわ疲れが出始めている。最初はノリでなんとかしていたのだが・・
さて5月に読んだ本。
1.spring 恩田陸
実はこの感想を書くのになかなか腰が重くてここまで時間がかかったと言える・・
びっちりとブログ1本使ってネタバレ感想を書こうとも思ったが、簡潔に。。
「蜜蜂と遠雷」が好きで、映画を観て感激していた母に文庫を贈ったほどで、自分の好きなバレエを題材に恩田さんの新作が読める!とワクワクして読み始めた。
恩田さんの妄想バレエがめちゃくちゃ面白い・・「蜜蜂~」でもオリジナル楽曲が出たり、「新しいクラシックを作りたい」と話すキャラクターがいたり、創作の片鱗を感じていたが、ストーリーの中で新しいバレエ作品が出るわ出るわ・・
わずか数行でその演目が目に浮かび、涙したほど・・それほどに「観たい!」と思わせてもらえただけで満足・・ではあったのですが。
相反する気持ちで、主人公が苦手・・となってしまった。
嫌いとは違うのだが、むしろ普段なら好きな部類でさえあるはずなのだが、「某アニメの二次創作で五万回見たキャラクターだな・・」と思ってしまった。
俗物的に述べると「魔性の受け」って感じで、なんか厚みがないな、カテゴライズされたキャラクターだなって気がしてしまって、話は面白いと思う自分と殴り合いしながら読んでいた。
あとなんだろう、セクシャリティの取扱いに硬さのようなものを違和感として感じた。どうも小骨が引っかかるというか・・無理に書いた感というか・・
とは言え、帯にもあるように「戦慄せしめられた」のは確か。物語で主人公ハルは賛否両論、客席から怒号が上がるような作品を求めた。
だからこの殴り合いしたくなる気持ちも全部この本の魅力なんだろうと思う。
あと個人的に今年2月に読んだマヌエル・プイグの別作品が話中に出てきたのも嬉しかった。そちらもいずれ読もう。
これのどこが、簡潔なのか・・短くてこれです・・
なんと友達が誕生日プレゼントに選書をしてくれました・・う、うれしい!!
友人は私という人間のバランスをよく分かってるなぁと不思議な気持ちになった。
カイロス的時間とクロノス的時間についてよく考えるけど、「その世とこの世」はまさにそれに呼応する。
谷川さんの本質を突く実態を伴わない言葉と、ブレイディさんの手にめり込んだ砂利の痛みさえ感じられるリアルな言葉。
内的な自分と戯れていたい←→現実を生きてかなきゃいけない
その狭間で時に引き裂かれ、時に奇跡のバランスを保ち、ヒイヒイ言いながら生きている。
友人にはそんな私の様子がしっかり伝わっているらしい。
「現場」という一編の中で谷川さんが劣等感について語っていて、言葉を扱う人々に神様のように思われている人でも、そのような感情を持つのだなぁと思ったりした。
私は夢を河合先生に、現場を出口先生にお任せして暮らしているなぁ・・
3.猿声人語 進化の途上でこの社会を考える 山極寿一
谷川さんが劣等感を抱く人物として挙げられてたうちの一人が山極先生だった。
私もまた自分のフィールドを持ちつつも、業界の旗振り役まで買って出る山極先生に惹かれる人間の一人だ。
この本は新聞や雑誌などへの寄稿を集めたもので、一般論や時事に寄せた話も多く、私にはちょっと物足りなかった。でも新しい興味の指針を探したくてこの本を選んだところもあり、心に響く一文もあった。
かつて経済は社会に隷属していた。社会を発展させ、人々の幸福を実現するために経済はそのエンジンとなった。今やその関係は逆転し、社会は経済に飲み込まれてしまった。
猿声人語 175ページより引用
ああ、もうまさに「幸せになりたい」を実現しようとして、気づいたら「結局お金なの?」ってなってる感覚はこれだと。
「快適な暮らしをしたい、旅行に行きたい」
自分の幸せを考えるほど、お金の問題に行きついてしまう。
社会的な幸せが経済的な幸せにすり替えられる。
ずっともやもやとしていた問題に明確に答えを頂いた。
ということで5月はこの3冊。
実は下書きしたきり、少し寝かせてしまってもう6月が終わる。
6月はなんと、1冊も読み切っていない・・!
どうなる次号!